2023.12.27
宮城県2023.12.27
可能性しかない!高タンパク、低糖質な「サメ」肉の
フィッシュプロテインソーセージ〈前編〉
株式会社 泰興商事

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株式会社 泰興商事

宮城県気仙沼市といえばカツオやサンマの産地として有名だが、実はサメの水揚げ量が日本一。サメからとれる貴重な部位「フカヒレ」の名産地であり、高級食材として日本、世界で一流の料理人が仕入れている。では、ヒレ以外の実の部分はどこへいくだろうか。実は、気仙沼ではさまざまな食品に加工して販売しているのだ。

サメの注目すべきポイントは、他の魚と比較して高タンパク、低カロリーであること。そこに目をつけたのが、気仙沼の水産加工会社「株式会社泰興商事」。圧倒的な加工技術を活かして、サメ肉を使用したアスリート向けの新商品「FISH PROTEIN SAUSAGE」を開発した。今回は、気仙沼住みます芸人であり開発担当のけせんぬまペイ!さんと、製造担当の真白宙樹さんにお話を伺った。

イノベーションを起こし、人と海の未来をつくる

気仙沼は漁業で栄えてきたまち。魚市場を中心に、水産業に関わる会社によって産業が形成されている。漁港から車で3分ほど走ると、水産加工の工場が立ち並ぶエリアが広がっている。

その一角にあるのが株式会社泰興商事。2010年に設立した水産加工会社で、気仙沼魚市場とともにまちの水産業を盛り上げてきた株式会社阿部長商店のグループ会社として設立。ソーセージの加工に特化した高い技術力を持つ設備が特徴的だ。ここは、小麦と豚肉を使用せず宗教上の問題にかからない食品を作る工場として「ハラール認証」を受けている。

株式会社 泰興商事

阿部長グループの理念は、「人と海の未来をつくる」。

海という大自然が生み出す多様な命と共存しながら、心豊かに幸せに生きる暮らしを目指している。「海の側で生きる人々の創造的な営みを未来につなぎたい」そんな思いから、おいしい海の恵みを安心・安全に食卓へ届けること、そして人と海とのふれあいを通じたくつろぎを提案することを使命に掲げ、60年以上の間気仙沼の水産業を盛り上げてきた。

2011年3月に起こった東日本大震災では、津波により工場や建物に大きな被害を受けた。そのような状況の中でも、まちを元気にするために自分たちができることに迅速に取り組んだ。被災地の復興シンボルと憩いの場として、港沿いに構えていた「気仙沼お魚いちば」をリニューアルオープン。また、観光の中心拠点となっている産業センター「気仙沼海の市」が再建すると同時に、阿部長グループの物販店と自社飲食店「リアスキッチン」、「いちば寿司」を新たにオープン。まちが早々に動き出して再開していく姿は、市民を元気づけた。

株式会社 泰興商事

現在も、水産業と観光業の2つの事業を掛け合わせることによって新たなイノベーションを起こそうと、多様でインパクトのあるチャレンジを次々と仕掛けている。そのチャレンジの一つが、今回のサメ肉を使った新商品開発だ。

高タンパク低カロリーな「サメ肉」

彼らは、海の側でずっと地域の産業を担ってきた企業だからこそ、未来に豊かな海と産業を残すために何ができるかを常に考えてきた。現在は、「持続可能な開発目標(SDGs)」を通して、資源の有効利用による廃棄物削減への取り組みに注力し、自然環境保護に努めている。その一環として、マグロのはえ縄漁の副産物として取れるサメを活かした商品開発を始めた。

稀有なサメ文化を持つ気仙沼。宮城県内の小学校では給食に「シャークナゲット」などのサメ肉を使ったメニューが提供されている。サメ肉を大切に食べることは、環境保護や食品ロスといった観点からも注目されている。

また、元陸上競技選手として世界で活躍したカール・ルイス氏は、機能性の高い栄養食としてサメを使った料理を食べていたという。

これらの背景から、他の魚と比べて高タンパク低カロリーであるサメ肉の性質に注目し、アスリート向けに新たな商品にするアイデアが湧いた。その名も「FISH PROTEIN SAUSAGE」だ。

株式会社 泰興商事

そこで活躍するのが、高い加工技術を誇る泰興商事の食品加工工場。ソーセージ加工に特化した専門工場で、最先端の設備と万全の衛生管理システムにより、海の恵みを美味しいまま安心・安全に届けることができる。

既存の設備と製造フロー、そしてサメのポテンシャルを活かし、サメ肉配合のソーセージを開発するに至った。現在は販売に向けて最後の調整中で、味と食感、そして機能性にとことんこだわっているという。

一体どうやって開発してきたのか?その思いを開発担当のけせんぬまペイさんと、製造を担当した真白宙樹さんにお話を伺った。

株式会社 泰興商事

文・写真 佐藤文香

後編へつづく