2023.12.13
福島県2023.12.13
あおさのりと塩ダレで食べる
「まるで海!」な福島常磐鍋セット〈前編〉
有限会社海幸

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有限会社海幸

冬の料理の定番と言えば鍋だ。冬のいてつく寒さの中、体を硬直させながら帰宅し、家族と鍋を囲んで夕食を食べる。ほっとする瞬間に人は幸せを感じるのかも知れない。

カモがネギを背負ってくる、ということわざがある。これはカモとネギがいっぺんに手に入ればカモ鍋をするのに好都合だから、ということに由来するが、カモがネギを背負ってきた場合にはカモ鍋一択、と日本では昔から相場が決まっているくらい、鍋を囲む文化は根強いものであることが伺える。

少し寒くなりはじめた10月某日、新しい鍋セットを「有限会社海幸」が開発しているという話を聞き、いわき市中央卸売市場内にある第二工場で、開発担当者の遠藤浩庸さんを取材させてもらった。

今年の新商品は「福島常磐鍋セット」

有限会社海幸
「福島常磐鍋セット」(画像提供:ConceptVillage)

福島県いわき市にある有限会社海幸は、地域密着で事業を行う従業員20名ほどの水産加工業者だ。1999年の創設以来、「魚を通して食卓を笑顔にする」という理念を掲げ、主に前浜の地魚を切り身や塩漬け、干物などに加工し、地元スーパーや介護施設、学校給食などに提供している。

2013年入社の遠藤さんは震災後のいわきの再興の一端を担うべく、さまざまな業務のかたわら、自社製品の開発にも力を注いでいる。

今回、開発した鍋セットは「福島常磐鍋セット」という名称で発売されるそうだ。どんな鍋セットなのだろうか。

「福島常磐鍋セットは、いわきの水産ブランド『常磐もの』のアンコウの切り身のほか、タラの切り身、さつま揚げとあおさのりをセットにしました。素材に合うように、独自で開発した塩ベースのタレがついています。ご家族やご友人と鍋を囲んでいただけるよう、1セットで4人分を想定した量になっています」

アンコウとタラはいわきで水揚げされたものを使用。練り物もいわき加工のものをチョイスし、塩ベースのタレにあおさのりを合わせることで「まるで海!」が味わえる鍋セットになっている。

いわきらしさを味わって欲しい

有限会社海幸
あらゆるシチュエーションを想定し、シンプルかつ上品なパッケージデザインを採用(画像提供:ConceptVillage)

こだわったのは「いわきらしさを表現できる鍋であること」と遠藤さんは言う。魚種選定は特に苦労したそうだ。

「いわきの冬の味覚といえば『アンコウ鍋』です。そこでまず、アンコウは外せないと考えました。また、以前は小名浜港を中心にたくさんのサンマが水揚げされたのですが、ここ数年は不漁が続いているため、安定供給という面で今年はタラに軍配が上がりました。タラの切り身は、1切れ100グラム以上のものを使っていてかなり大きいので、満足感は高いと思います」

さらに鍋の味に深みを出したいと考えた遠藤さんは、さまざまなアイデアを出すなかで、よい出汁が出るさつま揚げに行きついた。

とはいえ、出汁のための脇役キャラではない。スープをたっぷり吸ったさつま揚げは、噛むほどにじゅわっと口の中に旨味が広がる。

有限会社海幸
作業場。鍋セットの加工作業もここで行われる。

また、この鍋の大きな特徴として、あおさのりの存在がある。あおさのりは、相馬市松川浦で獲れる株式会社マルリフーズの高品質なものを使用。このあおさを贅沢に使うことで、芳醇な海の香りが楽しめるのだ。

文・写真 田川薫

後編へつづく