2024.12.18
宮城県2024.12.18
旬の鮮魚のおいしさを
そのまま詰め込んだ福袋〈前編〉
株式会社センシン食品

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「福袋」と聞くと、ワクワクした気持ちになる人は多いだろう。

株式会社センシン食品が今回開発した新商品は、三陸沖、福島県沖、茨城県沖で水揚げされた旬の魚を詰め込んだ「福袋」。何が入っているかはお楽しみ。海の恵みをたっぷり詰め込んだ宝箱のような商品だ。

2007年に福島県相馬市に創業した株式会社センシン食品は、順調に業績を伸ばし、自社工場の建設も計画していた。そんな矢先、2011年の東日本大震災による津波で工場が全壊。懸命な努力のすえ2016年に宮城県名取市閖上(ゆりあげ)に再建し、現在は相馬港や閖上港で水揚げされた鮮魚を加工・販売している。

年間150種類以上もの魚種を扱うセンシン食品では、水揚げされた魚を冷凍せず、鮮魚のまま加工しているという。小規模工場だからこそできるこだわりを専務取締役の高橋大善さんに聞いた。

食をエンターテイメントに!

福袋に入る商品の一部

新商品「三陸・常磐 揚げ物福袋セット」「三陸・常磐 海鮮丼福袋セット」は、相馬港、閖上港、石巻港などから水揚げされた魚を、鮮度が落ちないうちに加工・冷凍して商品化している。漁獲の状況に応じてコスパの良い魚種を厳選して詰め合わせていることから、開けてみるまで中に何が入っているのかわからない。まさに福袋だ。

海鮮丼用と揚げ物用の2種類があり、どちらも一般的な店舗で購入すれば7,000円以上の内容が入っているが、価格は5,000円とリーズナブルな点もうれしい。

海鮮丼用の福袋は、ヒラメ、アジ、サバ、ブリ、スズキ、タコ、イカ、カツオ、ビンチョウマグロなどの刺身や、釜揚げしらす、めかぶ、ユッケ風の醤油漬け丼、ゴロゴロ刺身のダイスカットなどが入る予定。1袋に5種類入り、家庭で手軽に本格的な海鮮丼が楽しめるようになっている。

漬け丼にはあらかじめ下味がついているが、そのほかは素材のおいしさをダイレクトに味わえる。魚種ごとにパックされた状態で届くため、好きな組み合わせで海鮮丼を作ってみるのも良いだろう。

海鮮丼の盛り付け例。見るだけでお腹が空いてくる!

一方、揚げ物用の福袋は、ヒラメやタラ、アジ、カナガシラのフライや、タコ、イカ、アンコウの唐揚げなどで構成される。衣付きで冷凍されているため、自宅で揚げるだけで手軽に食べられる。1袋あたり4種類以上、1kg以上が入る内容でコスパも抜群だ。

高橋さんによれば、海鮮丼の福袋は市場にも出回っているが、揚げ物の福袋はほとんどないという。これまで数々の加工を手掛け、自社オリジナルの揚げ物を開発してきた同社ならではの商品なので、消費者の心を掴むはずだ。

おいしさの秘訣は、鮮魚のまま加工すること

センシン食品2代目の高橋さん

福袋の中身は、その時々の水揚げ状況によって変わるという。一種のサプライズ的要素があり、福袋の醍醐味を味わえる。

「そこに価値を感じて、楽しんで手に取っていただきたいです。どの商品も間違いなくおいしいので、自信を持ってお届けします!」と高橋さん。自信の根拠は、独自の仕入れ方法にあるようだ。

穫れたてピチピチの魚を冷凍せず、そのまま加工する

おいしさを担保する最もシンプルで確実な方法は、鮮度の良い原料を鮮度の良いうちに加工すること。魚の鮮度を最優先に考え、冷凍は極力避けるのが、センシン食品の仕入れに関する基本方針だ。加工から出荷までスピーディなサイクルで進めているため、質の良い商品を提供できるのだ。

柔軟に対応することで、旬の魚を提供できる

鮮度を保つにはスピードが命!ベテランのスタッフが手際よく作業する

福袋の原料は主に福島県沖で水揚げされた常磐もの。週5回の頻度で相馬港に水揚げされる新鮮な魚を買い付け、翌日には加工まで完了させて包装している。

水産加工会社では、冷凍された原料を大量に仕入れて保管し、必要に応じて解凍して加工をするのが一般的だ。これは稼働率を安定させるために必要な仕組みだが、品質においては、やはり鮮魚には劣る。冷凍・解凍を繰り返すことで、品質の劣化は避けられないからだ。

スーパーで売られているパック詰めのお肉から、赤い液体が出ているのを見たことがある人も多いだろう。あれはドリップと呼ばれ、冷凍肉を解凍したときに肉の内部からたんぱく質やビタミンなどのうまみ成分や栄養素が流れでているのだ。そうするとぱさついて、味が落ちてしまうのだが、魚の冷凍・解凍でも同じ現象が起こるという。

そのため同社では、冷凍魚は使わず、必要な魚が不足した場合は別の魚種を組み合わせて対応するなど、柔軟な仕入れを行っている。たとえば、アジが500kg必要としているところ300kgしか入荷しなかったとしよう。センシン食品では、残りの200kg分をほかの魚種で補って、工場の稼働を安定させている。この調整力により、冷凍原料に頼らなくても工場を効率的に稼働する独自のノウハウを持っているのだ。

工場内の様子 その日ごとに作業する内容が変わる

小ロット多品目を扱い、柔軟な対応力を持つセンシン食品。常識破りともいえる福袋は、いったいどうやって生まれたのだろう。

文・岩崎尚美 写真・古関マナミ

後編へつづく