2024.12.20
福島県2024.12.20
老舗鮮魚店で働くお母さんが開発!
「おさかな離乳食」〈後編〉
株式会社おのざき

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キャップ付きで、もっと使いやすく

今回のリニューアルでは、キャップ付きのパッケージに変更した。一見、小さな変化に思えるかもしれないが、使い勝手が良くなることで子どもと過ごす時間の充実度はぐっと増すのだ。

まず、保存が断然楽になる。生後5〜6ヶ月の赤ちゃんの食事量はとても少なく、1パック270g入りのこの商品であれば2~3食分になる。冷蔵庫で3日ほどの保存は問題ないが、小分けにして冷蔵するのが手間という声や、衛星面が気になるという声もあった。

キャップ付きになれば、残った分はキャップを閉めて冷蔵庫に入れるだけで簡単なうえ、衛星面でも安心だ。

キャンプなどのアウトドア、外食先に持っていくのもおすすめと、小野崎さんは明るく話す。

「『魚の離乳食は手間がかかって大変なので、この商品があって助かりました』とお客様から言っていただくこともありました。キャップ付きになることで、より手軽に使っていただけるようになればうれしいです。

持ち運びもしやすくなるので、アウトドアや外食にもおすすめです。我が家もアウトドアが好きで娘が1歳になる前にキャンプデビューしたのですが、パンなどの手軽なものだけを離乳食として与えることに罪悪感を感じてしまうことがありました。せっかくのお出かけは、できるだけポジティブな気持ちで楽しみたいですよね。おいしくて手軽な離乳食があることが、家族みんなで明るい時間を過ごす手助けになったらと思います」

今回のパッケージリニューアルでは、ヒラメの離乳食のみの販売となるが、現在、赤魚を使った離乳食も開発に向けて動き出しているという。子どもが成長するにつれ、食べられるものが増え、選択肢がさらに広がることは子育てをより楽しくしてくれそうだ。

新しいことへ挑戦し続ける「おのざき」

販売を始めると明るい声がたくさん聞こえてきた離乳食。しかし、発売までの道のりは決して順風満帆ではなかったと小野崎さんは教えてくれた。

「経営陣には離乳食に対するイメージを持っていない方も多く、赤ちゃん用の商品を発売することに前向きではありませんでした。アイデアはいいけれど、ビジネスとして成り立つのかと言われてしまったこともありました」

そこで小野崎さんは、自身の大変だった経験に加え、離乳食の開発で得たノウハウは介護食にも活かせるはずだと説得した。その話を聞いた経営陣が流動食を食べる家族の顔を思い浮かべたことで、離乳食の商品開発への理解が深まり、想いが受け入れられたのだという。

「先代は、カツオを一本まるごと贈る文化を創ったり、魚屋としては珍しいテレビCMを放送したりと常に新しいことに果敢に取り組んできました。離乳食への挑戦は、成功や失敗にとらわれず、やるかやらないかを問われた時に『やる』のだというおのざきの姿勢が現れていると思います。新たなことに挑む姿勢を、私たちはこれかれらも大切にしていきたいです」

二代目から使われ続けているクジラのモチーフには「クジラのように大きな会社に」という想いが込められている

常磐ものは誇りの味

埼玉県で生まれ育ち、いわき市に嫁いだ小野崎さんは、常磐沖で獲れる魚種の豊かさや魚のおいしさに触れて感銘を受けたという。一方で、地元の人にとってはそれが当たり前になっていることも目の当たりにし「常磐ものをもっと誇りに思ってもらいたい」と思ったそうだ。

常磐ものの良さを伝えるため、高校生のインターンシップを受け入れた際には、仕入れから加工、実際に食べるまでを経験してもらったという。五感で味わえば、おいしさに納得し、心に残る地元の味として刻まれていくはずだ。

魚を捌くスタッフの姿に触れることで、感じられる魚の魅力もありそう

「赤ちゃんの離乳食期から始まり、子ども時代も成人してからも、長くおのざきと関わってもらえたらうれしいです。地域にこれだけ魚があるのは幸せなことだよ、いわきの海はこんなにすごいんだよっていうことを魚屋として伝えていきたいし、私たちができることを考え続けていきたいです」

子どもたちが地元の魚を誇りに感じて、この先の未来も海の恵みを感じ続けられるように。おのざきの挑戦は続いていく。

文・蒔田志保 写真・鈴木宇宙(TOP写真 事業者提供)