2024.12.11
宮城県2024.12.11
塩釜の老舗干物店が作る
新時代のレンチン!簡単干物〈前編〉
株式会社間宮商店

  • 宮城県
  • 株式会社間宮商店

株式会社間宮商店

みなさんは、家で焼き魚を食べるだろうか?

「骨があるから食べにくい」「魚グリルを使いたくない」「においが気になる」……などの理由で、本当は食べたくても魚を焼くことを敬遠している人もいるかもしれない。

そこで、宮城県塩釜市で干物作りを続けてきた「株式会社間宮商店」は、レンジで温めるだけですぐに食べられる焼き魚セット「YAKASATTA(ヤカサッタ)」を開発した。

手軽さとおいしさを両立させ、「魚をもっと身近に」という想いが詰まったこの商品を開発した道のりを、間宮徳昭社長と販売管理部の遠藤未来さんに伺った。

魚離れを食い止める次の一手に

株式会社間宮商店
丹精込めて作る、間宮商店の干物

1966年に創業した間宮商店は、港町・塩釜を拠点に干物作りに取り組んできた。何よりも素材と質にこだわり、目利きを活かして厳選した魚を提供してきたその姿勢から、周囲に「マニア商店」と呼ばれるほどだったという。

しかし近年、若い世代を中心に「魚離れ」が進んでいることに、間宮さんは危機感を抱いている。魚離れの理由の1つは、魚を調理する際のにおいや手間だ。

都市部の集合住宅では、魚を焼く際ににおいや煙が出てしまい、近隣から苦情が来ることもある。また、IH調理器具には魚焼きグリルがついていないこともあり、魚を焼いて食べること自体のハードルが高いのだ。

さらに、地球温暖化により魚の水揚げ状況にも大きな変化が生じている。間宮商店は創業当初からサンマを主力として扱ってきたが、近年は漁獲量が減少しているのが現状だ。

「今年は豊漁と言われていますが、それでも私の感覚では物足りないですね。サイズが小さく、脂のりも悪くなっていて、全盛期の採点を10とするなら、今年はせいぜい4くらいでしょう」

こうした状況のなか、間宮さんはこれまで通り干物を量販店に並べるだけでは、商売を続けるのが難しくなるだろうと考えた。そこで、一つひとつの商品に付加価値を持たせる決意をしたという。そうして生まれたのが今回のレンジで温めるだけですぐに食べられる焼き魚セット「YAKASATTA(ヤカサッタ)」だ。

実はレンジアップ商品についての構想は、何年も前からあった。社長に就任する以前から「魚離れ」を感じていた間宮さんは、もっと気軽に魚を楽しんでほしいと考えていたのだ。

このタイミングで実現に向けて動き出したのは、若い世代の社員が支えてくれる体制が整ったから。遠藤さんをはじめとする熱意あるスタッフが根気強く試作と改良を重ねたことで、間宮商店の挑戦が形になった。

未利用魚「エイ」をメインとした商品開発

株式会社間宮商店
右下がエイのみりん干し

「YAKASATTA(ヤカサッタ)」は、エイのみりん干し、真ホッケの塩干し、利尻昆布醤油干し、サバの塩干し、みりん干しの計5種類6パック入りで提供される。

中でも目を引くのは、なんといってもエイだろう。

エイは「エイヒレ」として居酒屋などで提供されることはあっても、家庭で焼き魚として食べるイメージはあまりないかもしれない。実際、エイは「市場で価値がつきにくい」「毒針があって危険」などの理由から漁師がリリースすることも多く、未利用魚と呼ばれている。

しかし、温暖化の影響でエイの水揚げ量が増加し、北海道や山形、福島といった一部地域でエイを食材として活用する機会が増えているという。

けれど、長年未利用魚とされてきたエイに抵抗感を持つ人もいるだろう。間宮さん自身も、当初はエイを使った商品開発に慎重だった。しかし、遠藤さんが率先して商品開発を進めたことで、今回のレンジアップ商品が実現したそうだ。

エイに向き合い続けた結果、日常使いする文房具もエイで揃えてしまったというほど「エイ愛」に溢れた遠藤さんは、「エイはふわふわとした身のやわかさと、コリコリとした軟骨の食感の違いを楽しめます。おつまみとしてもぴったりですよ!」と、エイの魅力について力強く語る。

献立作りの大変さを軽減したい

株式会社間宮商店
チンするだけで夕飯のおかずが一品完成!

レンジアップ商品の開発には、遠藤さん自身の「毎日の献立を考えるのが大変」という実体験も反映されている。

毎日お肉ばかりだとカロリーが気になるし、魚をグリルでわざわざ焼くのは面倒で、週末が近づくと料理をする気力も尽きてしまう。こうした悩みを持つワーキングマザーにも、夕飯の一品として取り入れやすい商品にしたかったという。

また、しっかりとした味付けで冷めてもおいしいため、お弁当のおかずとしても重宝するのだとか。

株式会社間宮商店
このツヤやふっくら感、レンチン商品とはとても思えないクオリティだ

さらに、ひとり暮らしで普段あまり自炊をしないという人でも、電子レンジさえあれば手軽に魚料理を楽しめる。現代人のライフスタイルに寄り添う新しい魚の楽しみ方として画期的な商品だ。

文・岩崎尚美 写真・古関マナミ

後編へつづく