2024.10.25
茨城県2024.10.25
大津漁港自慢の鮮魚を
家庭で本格「漬け丼」に〈後編〉
株式会社まえけん

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急速冷凍技術で店の味を閉じ込める

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「これまでは父が作り上げた食彩太信というブランドを壊すことはできないという想いを持っていたので、鮮魚を使用した商品の製造や販売は控えてきたんです」と話す前田さん。

しかし、展示会で最新の急速冷凍装置と出会い、その技術の高さに驚くとともに、この技術があれば、日本全国に自信を持って大津漁港の新鮮な魚と食彩太信の味を届けられると確信したという。

急速冷凍して真空パックにすることで、解凍した際に、店で鮮魚を食べるときと同じような味わいになるのだそうだ。「正直、今までは冷凍の魚は品質が良くないというイメージを持っていたんですよね。でも冷凍技術の進化によって、鮮度そのままにお店の味を消費者に届けられるのではないかと思ったんです」

前田さんの商品開発に新たな光が差し込んだ瞬間だった。

大津漁港で獲れる肉厚なヒラメを全国へ

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最新の冷凍技術と大津漁港で獲れる新鮮な魚。商品開発の舞台は整ったが、ECで買い物をするお客さんが果たして何を求めているのかが分からなかった。

そこで、商品開発を行うチームで、メニュー表の見直しやこれまでに開発したお土産品を見比べ検討した。すると、改めて海鮮丼や刺身定食の売れ行きが高く、鮮魚が人気であることに気づいたという。

前田さんは以前から、都心や山間部であっても大津港の鮮魚を手軽に食べてもらいたいという想いを抱いていた。

「開発チームで何を、どう、どんな形にすれば、消費者が喜んでくださる商品になるのかを話し合いました。そのなかで、『大津漁港で揚がる肉厚なヒラメなら、どこにも負けない自信がある』という話になり、ヒラメで食彩太信らしさが伝わる商品を作ろうということになったんです」

黒潮と親潮がぶつかり合う茨城県沿岸は、 プランクトンが多く小魚が集まる。 この豊かな漁場でとれるヒラメは“常磐ものと呼ばれ、食通の方や市場で高い評価を受けているのだ。豊富な餌を食べて肉厚となったヒラメは、淡白でありながらも濃厚な味わいなのだそうだ。前田さんはこの自慢のヒラメで、商品開発をすることに決めた。

創業から継ぎ足してきた、伝統の味を届けたい

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食彩太信では、創業以来、スープやつゆなどの味のベースとなる“たれ”を継ぎ足ししながら使用してきた。前田さんの父・信雄さんが独自の配合で作ったもので、熟成された味は、店が長い間、北茨城の地で積み重ねてきた歴史そのものだ。

「新鮮な魚とともにこの店の味を届けたかったので、漬け丼を開発することにしました。伝統のたれをベースに、独自の配合をして試作品を何度も作り、開発チームで意見を交換しながら、ニンニクや唐辛子を加えていきました。その甲斐があって、理想とする漬け丼が完成しました」

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早速、ヒラメの漬け丼をいただいた。一枚一枚しっかりと厚みがある刺身は、食べ応えが十分にあって驚いた。醤油ベースの下味がしっかりついていて、噛み締めると甘みが口の中に広がる。淡白な中にも深い旨味があり、あっという間にたいらげてしまった。

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左からスルメイカ、アンコウ、ヒラメ

漬け丼はヒラメのほか、大津漁港で獲れるアンコウやスルメイも合わせてセットで販売する予定だという。ここまで大津港の味を届けたいと思う前田さんの原動力は何なのか。最後に改めてその想いについて伺うと、真剣な表情で話してくれた。

「私の祖父は、農業と林業を生業としながら『地元のために』と汗を流してきました。子どもながらに祖父の背中が格好よかったんですよね。さらに父が店を開き、魚を捌く姿に憧れました。祖父と父が地域に貢献する姿を見てきたので、私も自然と生まれ育った町のために何かしたいという気持ちが生まれたのだと思います。大津港で獲れる新鮮な魚を全国の人に知ってもらうことができれば、この地域がどんどん元気になっていくと思うんですよね。今回の漬け丼は、茨城の地魚の味を全国に届ける一歩になると確信しています」

こう話す前田さんは自信に満ちている。大津漁港の新鮮な地魚と受け継がれてきた味が調和した漬け丼を、ぜひ食卓で味わってほしい。

文:谷部文香 写真:吉田和誠