2024.11.1
千葉県2024.11.01
銚子の仲買人が厳選!
鮮度抜群“地魚フィレ”〈後編〉
有限会社カネ八商店

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最新冷凍技術×真空パックで鮮魚を商品化

カネ八商店では、昨年から瞬間冷凍機を導入したことで、鮮度を保ったまま銚子の地魚を全国へ届けることが可能になったという。

「今まで冷凍と聞くとどうしても味が落ちてしまうイメージがあったのですが、実際に食べてみてそのイメージが払拭されました。解凍したときに、水揚げされた当日と同じような鮮度・風味で食べられる。家族と仲買人仲間にも試食をしてもらい、魚のプロたちのお墨付きなので味は間違いないです」と啓太さんは自信を見せる。

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その理由は、特殊凍結庫「エックス・フリーザー」にある。

一般的に食材を一度凍らせると、細胞の内部の水分が氷になる。解凍時にはこの氷が溶けることにより、細胞内の成分と一緒に旨味も外に出てしまうため、鮮度や風味が落ちるのだ。

一方、「エックス・フリーザー」は、食品全体の細胞膜を破壊することなく、包み込むように瞬時に冷凍するため、解凍時に旨味成分を含むドリップの流出が抑えられ、生のような食感と風味が保てるという。

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さらに今年は、新たに真空包装機「コンパック」も導入。魚を真空パックで保存・輸送することで、空気に触れることによる脂の酸化や乾燥、細菌の増殖を防いでくれるのだそうだ。

「以前はパッキングする際に必ず一人がついている必要がありましたが、コンパックは一度ふたを閉じれば自動的に真空パックしてくれるため、業務の効率化にも役立っています」と啓太さん。テクノロジーの活用により、これまで難しかった鮮魚を商品化し、全国に届けることができるのだ。

スズキ・ヒラメ・マダイを食べ比べ

こうして仕上がった「3魚種の刺身用フィレセット」は、200g前後のスズキ、ヒラメ、マダイの半身が3魚種2パックずつ、計6パックがたっぷり詰め合わせになっている。冷凍ストックできる利便性はもちろん、選ぶ楽しさや食べ比べできる楽しさもあるだろう。

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マダイを解凍後、 定番のカルパッチョに。身は透明感と歯応えがあり、やさしい甘みを感じられる

「もちろん刺身で食べるのもおいしいですが、マダイはシンプルに塩焼き、ヒラメは昆布締めにするのもおすすめです。スズキやヒラメは、フランス料理店などではムニエルにして出すこともありますよね」

昼食を食べるタイミングを逃して取材にやってきた筆者は想像しただけでお腹が減ってきていると、啓太さんは「マダイはいい出汁が出るので、思い切ってぶつ切りにして味噌汁に入れてあら汁のようにしても」と、これぞ猟師町といった豪快な食べ方も教えてくれた。

スズキ・ヒラメ・マダイはいずれも3枚おろしのフィレの状態なので、さまざまな食材、味つけとも組み合わせやすく、洋風にも和風にも調理可能だ。タイやヒラメは高級魚にもあたるので、お祝いごとや特別な日のおもてなし、魚好きな方へのギフトにも良さそうだ。

「昨年、うちの商品を購入したお客様が『おいしかったです』とレビューを書いてくださって。今まで市場を相手に商売をしてきていたので、直接、消費者の方の声を聞けるというのは初めての体験ですごくうれしかったですね」と啓太さんは顔をほころばせる。

時代のニーズに合わせて進化してゆく

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銚子を代表する海・灯台・風車・日の出のモチーフと、方言である「だっぺよ」をプリントしたTシャツは啓太さんのデザイン

今後は商品の魚種や加工法のバリエーションも増やしていきたいと話す啓太さん。なかでも注目しているのは、ふだんは価格がつきにくく市場に出回ることも少ない「未利用魚」の存在だ。

「ほんの少し傷がついたマグロや日焼けして黒ずんだタイは、味は変わらないのに豊洲市場に送っても思うように値がつかないことが多いんです。そういった魚を仕入れてアレンジし、ECサイトで販売できないか試行錯誤しているところです。今、開発しているのはマグロのつくだ煮ですね。限られた資源を次世代につなげていくためにも、未利用魚をうまく活用していければと思っています」

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啓太さんは新商品の開発にとどまらず、「一次産業に関わる僕らが魚のおいしさを工夫して伝えていきたい」との想いから、動画や写真を通じた発信にも意欲的だ。

脈々と受け継がれてきた銚子の魚食文化を守りながら、時代のニーズに応じて進化を続けていくカネ八商店。 そんな仲買人が産地から直送する地魚をぜひ堪能してもらいたい。

文・写真 寺田さおり