銚子名物!脂ののった「漬けいわし」
気候変動により、今まで銚子漁港で多く水揚げされていたサンマ、サバ、アジ、イカなどは水揚げが減少傾向にある。その中でも、北川さんは安定して水揚げがあるマイワシを商品に活用したいと考えた。そこで開発した商品が「漬けいわし」だ。
「イワシというと、スーパーでは鮮魚か、丸干しで売っているものが多いと思います。そこで、今までとは違った形でイワシの食べ方を提案したいという思いから、下味がついた刺身漬けを開発しました」
6〜7月にかけて銚子で水揚げされるマイワシは 「入梅イワシ」と呼ばれ、1年の中でもっとも脂がのっており、その味わいは格別だという。今回の商品は、この入梅イワシの中から規格に合う大きさのものを厳選した。脂がのっているマイワシの身はやわらかいため、手作業で開き、マイワシ特有の生臭さを軽減するために「漬け」の工程を組み込んで仕上げている。
「味付けは出汁、醤油、みりんで薄味に仕上げています。もちろんそのまま召し上がっていただいてもおいしいですし、お好みで醤油をつけていただいてもかまいません。お客様自身で味を調整できるよう、旨みは閉じ込めつつ、あえて薄味に仕上げているんです」
旨みを引き出す「真鯛の湯引きスライス」
2品目は銚子沖で獲れた天然マダイを使用した「真鯛の湯引きスライス」だ。マダイは水揚げされたその日のうちに捌き、小骨はピンセットを使って一本一本手作業で取り除く。刺身状にスライスする前に一手間加え、マダイの皮の上から熱湯をかけて氷で締めているのだそう。
「タイの皮は厚みがあってかたさもあるので、食べやすくするためにサッと熱湯をかける湯引きをしています。皮を取り除いてしまうこともできますが、マダイは皮下に旨みがあるので、湯引きをした皮を残すことで通常の刺身とはまた違った味わいを楽しめるんです」
北川さんのおすすめの食べ方はマダイの刺身に「塩」をつけて食べること。醤油とはまた違った、マダイ本来の上品な味わいを楽しむことができるのだそうだ。
鮮度を閉じ込めた「キハダマグロ赤身サク」
「マグロはスーパーではよくパックに入って販売されていますが、ドリップが出やすいんです。そこで特殊凍結機を使って、ドリップを抑えたキハダマグロの刺身用のサクを開発しました」と北川さん。
一政水産では一昨年、特殊凍結機「エックスフリーザー」を銚子市の中でもいち早く導入した。エックスフリーザーを使うことによって、食材の細胞を壊さずに急速凍結し、獲れたての鮮度と風味を保つことができるのだそうだ。
「解凍後の刺身を試食してみましたが、食感、風味、色ともに鮮魚の状態と大差ないです」と北川さんは力を込める。最新鋭の技術の力を存分に発揮し、シンプルにマグロのおいしさを楽しむことができる一品だ。
こうしてできあがったお刺身セットは、赤身、白身、青魚とバラエティ豊かな銚子の味を一度に楽しむことができる。お刺身の盛り合わせ、海鮮丼、お寿司としても楽しめ、年末年始に魚を囲んでのホームパーティにもおすすめだ。
蓄積されたノウハウにひとさじのアイデアを
一政水産では長年、専務取締役の北川嘉一さんが魚市場に足を運んでみずから魚を目利きし、買い付けを行っている。漁港から車で5分ほどの本社工場でその日のうちに加工しているのだから鮮度は申し分ない。
鮮魚のシンプルなおいしさが味わえるのは、長年培った確かな技術に裏打ちされた実直で丁寧な仕事があってこそのこと。そこに加わるほんのひとさじのアイデアが商品の質を底上げし、一政水産でしか味わえない商品を生み出している。
「鮮魚でギフトセットを」という想いを温めていた一政水産が自信を持って全国へ届ける「漬けいわし、真鯛湯引きスライス、キハダまぐろサク」を詰め合わせたお刺身セット。大切な人へのギフトはもちろん、この1年の労いに、自分へのギフトとして味わってみるのもいいだろう。
文・写真:寺田さおり (写真1、5、7枚目:EAT PHOTO)