かに型での失敗を糧にほたて型可食トレーを開発
一般家庭向け商品である「器ごと食べるかにグラタン」の第2弾として、県産ホタテを使用した「ホタテグラタン」を製造し、観光客向け商品として販売を目指す宝成食品。そのためにまず取り組んだのは、ホタテ型の製造だった。
「今は可食トレー部分の型を焼く機械を発注している段階です。ホタテの型のデザインがようやく確定し、金型を作っていただいています。12月の頭には機械自体が出来上がる予定で、試作はそれから開始します」
器となる可食トレー部分の配合、ほたてグラタンのグラタン部分の材料の配合はすでに検討済とのこと。あとは試作をして微調整するだけだ。
「器部分の製造はかにグラタンのときにたくさん失敗したので、ほたて型の器は試作前からどうすれば良いかある程度見当がついています。ホタテグラタンは小麦粉のほかに青森県産の米粉を使うことで生地が固く、よりサクサクした食感に。また生地にはほたてパウダーを練り込み、焼いたときにホタテの香ばしさが生地からもしっかりと感じられるようにしたいと思っています」
かにグラタンの器にはスケソウダラのすり身が入っていて、混ぜることによって水分に強い生地になるのだそう。今回のホタテ型の器でもすり身は必須だ。
「おいしいものを届けたい」からこそ、味にこだわる
「かにグラタンの発売当初から、ホワイトソースがおいしいと評判なんですよ!」と河村さん。
ホワイトソースは、オニオンソテーペーストをたっぷりと使ったコクと深みを感じるホワイトソースに、たっぷりのマカロニを入れ、食べて満足感のあるボリュームに仕上がっている。材料の原価率は高めとのことだが、そこには河村さんの情熱とこだわりが感じられる。
「たっぷり食べたなと思える満足感と、食べておいしいと思える商品であることにこだわって、それを徹底しています」とにかく食べてみて!と笑顔で商品について語る河村さんから、商品のおいしさに対する自信が伝わってくる。
ほたてグラタンのホワイトソースは、県産のベビーボイルホタテを何粒入れるか、これから試作を経て検討していくという。
「持続可能な製品」はこれからの自分たちの武器になる
「ほたてグラタンはお土産に特化して観光客向けに作っていきたい思いがあるので、インパクトのあるパッケージにもこだわっていきたいです」
食べる方が目で見ておいしそうだなと思うパッケージにして、個数ごとのバリエーションを増やしたり、化粧箱に入れるなど、売り方も検討中だ。
「ホタテが旬である5~6月には、水揚げされてボイルしてから一度も冷凍しない状態の原料でほたてグラタンを製造し、ワンフローズンで作った季節限定の商品なども展開していきたいと構想中です」
通常は冷凍された原料を使用して商品を作るが、旬をそのまま味わえるワンフローズンなら、プリっとしたホタテの食感を楽しめる。この期間限定のほたてグラタンにとどまらず、リゾットやパスタ、アイスクリームなど、ほたての器を活用した商品の幅も広げていけそうだ。
「青森がホタテの産地だからこそ、器があることで商品展開はしやすいし、アイデアを考えることが楽しいです。また、SDGsは、取り組みが早ければ早いほどいいはずです。持続可能な原料の調達が無ければ、商品を作り続けることは不可能なんです。天然ものだけに頼らず、『持続可能な製品』を自分たちの武器として考え、商品展開をしていくことで安定的な売上や販路開拓につなげていきたいです」
おいしいものを作るためには、設備も原価も必要。味にこだわりを持ち、食べて印象に残るような商品づくりをしていきたいと語る河村さん。「青森県が誇るホタテの旨みをぞんぶんに味わってほしい」という思いがしっかりと反映されたほたてグラタン。その完成が、今から待ち遠しい。
文・鈴木麻理奈 写真・世永智希