2024.12.11
青森県2024.12.11
“器ごと食べれる”青森土産の
ほたてグラタン!〈前編〉
宝成食品株式会社

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宝成食品株式会社

毎週日曜日の朝、八戸市の舘鼻漁港では350もの店舗が並ぶ日本最大級の「館鼻岸壁朝市」が開催される。そんな朝市でにぎわう館鼻漁港から少し山手に進んだところにあるのが、2009年、ズワイガニの販売を中心に八戸市で創業した宝成食品だ。

代表取締役の河村隆衛さんが「これまでにない、食べられるカニの甲羅の器を商品化しよう」と試行錯誤のすえ、2023年度に商品化した「器ごと食べるかにグラタン」は、ヒット商品となった。SDGsを意識している方たちはもちろん、充実した内容量やそのおいしさから小売店等で堅調に売れ行きを伸ばしている。

そして今回「器ごと食べる」シリーズの第2弾を発売するという。それが、「器ごと食べるSDGsな青森県産ほたてグラタン(仮)」だ。商品開発に向けて、こだわりや想いを伺った。

「カニ屋」が手がけるおいしい商品づくり

宝成食品株式会社
館鼻漁港からほど近い宝成食品本社。社屋周辺には自社トラックが何台も行き来する

2009年創業の宝成食品は、カニやエビ、県内で獲れる水産品を使った自社商品の製造加工と販売をメインに、量販店、小売店、外食店等への卸売販売を行っている。

2023年度、本事業で開発した「器ごと食べるかにグラタン」は、発売後、想像以上の反響があり驚いたと河村さんは言う。

「シンプルに、開発してよかったです。『器ごと食べるかにグラタン』を携えて商品展示会などのイベントに出展すると、多くの方に足を止めていただくようになりました。従来のかにグラタンは、本物のカニの甲羅に入ったグラタンがほとんどですよね。それが甲羅まで食べられる。『なぜ?』という疑問や不思議からお客様が足を止めてくれるため、営業しやすくなりました。当初予定していた販売数量から、現時点で1.5~2倍近く売り上げています」

宝成食品株式会社
量販店にて販売中の「器ごと食べるかにグラタン」。見た目にも贅沢にカニが入っているのが分かる

カニの甲羅部分の可食トレーを最中の皮で作り、そのなかにグラタンを詰めたこの商品は、国内でも特殊でほかに例はない。新たな発想で生まれた商品だからこそ、面白がって購入してくれる方も多い。食べてもらう機会が生まれることと商品自体のおいしさから継続購入につながっている。

また、「器ごと食べる」可食トレーにしたことで、従来の取引先から幅が広がったという。

「SDGsや環境問題に対して多くの方が興味関心を持っているということを実感しました。環境に意識を向けているお客様は、二つ返事で導入を決めてくださることもありましたね。本物のカニの甲羅を使ったグラタン製品は、器となる資材が足りないために掻き入れ時である12月に欠品することも過去にありましたが、器を自分たちで作ることで持続可能な商品として提供できるので、お客様にも刺さる商品となっています」

また、本物のカニの甲羅とは違って可食トレーにはトゲがないため、小さなお子様やお年寄りでも安心して触れられ、丸ごと食べることができる。そうした特性から、介護施設や保育施設でのメニューなどにも新たに採用され、販路の幅が広がっている。

しかも、一般的なカニグラタンより1個あたりの内容量が多く、価格はリーズナブルだ。

「日常的に食べられる値段にすることでリピート購入していただけると思うので、価格は頑張っています。これからクリスマスのシーズンに向けて、かにグラタンは需要が伸びる時期。工場ではフル稼働で製造しています」。

青森土産「器ごと食べるほたてグラタン」の開発へ

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宝成食品代表取締役の河村さん

現在「器ごと食べるかにグラタン」は、青森県内外の量販店や小売店の冷凍食品コーナーで販売中だ。想像以上に反響があった本商品に続き、2024年の事業では新たにホタテ型の「ほたてグラタン」に挑戦するという。

「円安傾向や資源の枯渇など、環境の変化もあって、カニなど海外産の原料はすべて価格が上がっています。それであれば、海外産を使うよりも青森県産の原料を使用した商品の方が喜ばれるのではと思ったんです。青森県といえばホタテで、全国でもトップクラスの生産量を誇ります。そこで、ホタテを使った製品が作ろうと考えました。県産ホタテを使ったホタテグラタンなら、青森県のお土産になりますし、今後の営業の方向性を変えていく一つのきっかけにもなればと考えました」。

小売店・量販店中心の「かにグラタン」から、青森の観光土産としての「ほたてグラタン」へ。ホタテグラタンの商品開発に向けて、宝成食品の新たなチャレンジが始まった。

文・鈴木麻理奈 写真・世永智希

後編へつづく