2022.12.16
岩手県2022.12.16
北三陸から世界へ
~ぶれない心が道を切り拓く~vol.02
北三陸ファクトリー

  • 岩手県
  • 株式会社北三陸ファクトリー

前編はこちらから

応募のきっかけ

洋野町のウニ加工品は、鮮度が重要で保管のものが主流です。スーパーや土産物店でも冷蔵ものは販売量に限りがあります。「ウニの魅力、洋野町の魅力を、生ではない食べ方で手軽に感じてほしい」との想いが、今回の商品作りのきっかけです。自ら情報収集するといという之典さんは、今回の事業も自ら見つけ手を挙げたとのこと。コンセプトに基づき、短気集中スタイルで、数多くの商品を世に送り出します。

今回の新商品を一部ご紹介します。

● はぐくむうにバター

磯焼け対策、地域での事業創出を目的とした“はぐくむうに”ブランドを定着させるために開発の養殖ウニを使用したうにバター。一口でうにの濃厚な旨味とバターの風味が堪能でき、食べるのが惜しくなるほどプレミアムな一品です。

●北三陸スプレッドシリーズ【KITA-SANRIKU CRAFT SPREAD】

 (陸奥湾帆立のスプレッド、北三陸水たこのスプレッド、三陸あみえびのビスク風スプレッド)

高品質高付加価値商品な“北三陸”ブランド定着を目指し、店頭や、お客様の扱いやすさを求めて“常温品”を作ろうと開発されました。北三陸の食材を活かしたスプレッドシリーズ。

私自身、手土産や贈り物を選ぶ際に、味、品質、パッケージも素敵!なのに“要冷蔵・要冷凍”で断念した経験が幾度もありますので、これは嬉しいアイテムです。

●“うにドリア”と“うにバターピラフ”

以前から付き合いのある福島県いわき市のHAGI フランス料理店の萩春朋シェフにレシピ開発協力を依頼。震災後1日1組フレンチを10年続け(現在は最大10名まで)、自ら生産者を訪ね福島の食材を伝え、自身で料理を提供しています。その珍しさと芯のある料理人としての生き方に全国からシェフの店に料理人が視察に訪れています。そんな萩シェフは“テロワージュ北三陸”のイベント等を通じ、これまでの商品開発にも協力をいただいている頼もしいパートナーなのです。

訪れた時にはレシピは7割が完成とのこと。完成が楽しみです!

  

強力なサポーター

海に面した北三陸ファクトリーの新しい工場とオフィス。真っ白い壁にアルファベットでつづられた社名からは、世界への発信拠点だとの威厳も感じられます。デッキ付きの建物はオフィスというよりリゾートっぽさが漂い、私を含め訪れた人は「これが会社なの?」と驚くほど。潮風が心地よく、刻々と変わる海の表情を目のあたりにできます。

工場を案内してくれたのは、妻の佳世子さん。なくてはならない強力なサポーターです。

「洋野町に来てみてびっくりでしたよ。勢いで来ましたし」ハハハッ!

気丈に振る舞う佳世子さんは、海外との取引で流暢な英語を使いこなし、通訳を入れずに商談に臨みます。栃木県出身で、大学卒業後は大手米国証券会社の法務部に務める、いわゆるバリキャリだったそうです。「リモートワークの話もありましたが、東京の仕事はすっぱり辞めたのです」とサバサバ話す姿からは、決断力と実行力の高さが感じられました。

今、読んでくださっている方も、お二人のなれ初めが気になって仕方がありませんよね?「どちらで之典さんと出会ったのですか」間髪入れずに質問してしまいました。

「当時、通っていた都内のビストロでウニのイベントに参加したんです。ウニは好きでしたが、本当にたまたま。生産者の下苧坪が来ることも知りませんでした。意気投合して、気付いたらここに来ていたという感じです」ハハハッ!

ウニ好きではあったそうですが、実際にこちらで養殖事業を始めて、本当の意味でウニを愛するようになったのはここ4年なのだそうです。ウニを通じて、海の環境問題を掘り下げていったといいます。隣接する『種市うに栽培漁業センター」で稚うにを手にし

「こんなにちっちゃくてもウニなんです。かわいいんですよ〜」と話す佳世子さんからウニ愛がにじみ出ていました。

 

閉鎖的な風土も否めず、新しいことに挑戦するハードルの高さにくじけることもあると察します。しかしながら、佳世子さんは「何が何でも成功したいので!」と動じなさそうです。

「ほぼ運で生きていて、失敗する気がしません。そう信じ切るしかないし、できると思えばできるんですよ!」

基本的にしくじることがないという佳世子さんの頼もしさは、簡単にまねできるものではなさそうです。

地魚の魅力

世界3大漁場としても知られる三陸沖。もっともっと、多くのお客様にとって身近であるべきだと考えています。

「地域のさまざまな魚を食べて欲しい。私としては、ウニを中心として他の三陸の海の幸ももっと楽しんでほしいですね」と之典さん。

海外産品でコストを下げ、大手による薄利多売から抜け出せないと日本の水産はなかなか買ってもらえません。産地の人が虐げられている構図からの脱却が必要です。

「我々が産地のものに誇りを持つのはもちろん、消費者の皆さんにもその感覚を抱いていただき、結果として食料自給率を上げていくことも重要だと考えます」

未来

北三陸ファクトリーのホームページには、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」が高らかに掲げられています。

『北三陸の最高の食材で最高の製品を創り、世界中の食を愛する人たちから、私たちの製品が熱狂的に支持されている未来を目指します。

食を通じて「これからの豊かさ」とは何か、を探索します。

未来のために、持続可能な「水産資源」「地域」の実体化と、未来を担う人材の育成に取り組んで行きます。』【一部抜粋】

「キリンさんからの支援を受けた際に、経営理念もしっかり作りました。そこからぶれずにやっていきたいですね」

改めての決意に、未来をまっすぐ見つめる之典さんの情熱が伝わってきました。

そんな、之典さんのインタビューを知ってか知らずか、別の場で佳世子さんに社長の長所を問うと・・・

「下苧坪は、本当に言っていることがぶれないんですよ」と一言。

互いの信頼感を基に、今後も全力で駆け抜けていくであろう2人からは、確実に夢を掴む力強さを感じずにはいられません。

岩手の最北の町にいたことを忘れるくらいに、世界を身近に感じた1日でした。
グルメ好きの方たちとのお食事会、ワイン好きへの手土産に…おしゃれをして出かける時のお供ができました。

文・写真:石山静香