2023.02.8
千葉県2023.2.8
銚子から、世界へ。
~「銚子つりきんめ」の極上刺身を最高の状態で食卓に~ vol.02
一政水産

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  • 一政水産株式会社

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冷凍マグロと生マグロ

子どもからお年寄りまで、国内外でお刺身としてもっともなじみ深いマグロ。スーパーや回転寿司で私たちが口にしているもののほとんどが、一度冷凍されていることをご存じでしょうか。マグロは大型のマグロ延縄漁などで大量に漁獲・水揚げ後、マイナス60度で急速凍結します。品質を大きく落とすことなく、長期間保存ができるので、最終的に比較的安価で販売されます。

一方「生マグロ」とは、「加熱していないマグロ」ではなく、水揚げしてから「一度も凍らせていないマグロ」のことです。小型のマグロ延縄船で漁獲したマグロを血抜きし、エラや内臓を取った後、氷または0度近い水の中で冷蔵した状態で運びます。冷凍より当然手間も費用もかかるので、生マグロの方が高額で売られます。こういう背景もあり、市場に出回る生マグロの割合は、約2割程度だそうです。ちなみに、銚子港に水揚げされるすべてのマグロは、「生マグロ」。ここでも、銚子漁業の強みが感じられます。

生の刺身と見(食べ)まがう冷凍刺身

知れば知るほど、本質的に「生」のお刺身にありつくのってなかなか大変だと思いませんか?もちろん、お金に糸目をつけない方針でしたら、通販などで探せば1kg 6,000円〜20,000円くらいで見つけられますが、やはり一般的なご家庭でしたら、お祝いなど特別な日限定とかになるでしょう。(回転しない高級寿司屋に行くのも一つの選択肢としてはありですが)

前置きが長くなりました。銚子漁業界のホープ、一政水産株式会社の専務取締役・北川嘉一さんが前々から挑戦してみたいと思っていたのが、特殊凍結庫「Xフリーザー」の導入です。

一般的に、生物の細胞は凍らせると、内部の水分が硬い氷になり、細胞を破壊します。また、解凍時にはこの氷が溶けることにより、細胞内の成分と一緒に旨みも外に出てしまったり、細胞内に空洞ができてしまうため、鮮度や風味が落ちることがあるのです。

この「Xフリーザー」は、食品全体をムラなく、包み込むように冷却・冷凍。細胞内の氷結晶を非常に細かくすることで、細胞膜を破壊しません。解凍時も、水分、たんぱく質、うまみ成分を含む「ドリップ」が抑えられ、生のような鮮度と風味が保てるのです。

日本一の金目鯛の寿司種

北川さんは、この高度な技術が実現できる「Xフリーザー」を購入し、開発に踏み切りました。商品化したのは、銚子のブランド魚として知られる「銚子つりきんめ」。深海に住む高級魚である金目鯛は、刺身や寿司ネタのほか、伊豆の方ではあめ色に煮込まれた甘じょっぱい煮つけがポピュラーです。

銚子沖で育てられた金目鯛は、その豊かな環境から周年上質な脂がのっています。銚子漁港に水揚げされるのは、立て縄と呼ばれる一本釣り漁法により、一尾ずつ丁寧に釣り上げられた金目鯛。手釣りによって漁獲されることから、魚体に傷が付きません。また、近郊の漁場で漁獲しその日の午前中には市場に出すため、大変新鮮な状態で出荷されます。

こういった好条件で仕入れることのできる「銚子つりきんめ」を、北川さんは「Xフリーザー」を使い、『日本一の金目鯛の寿司種』を開発。なんと、鮮魚取り扱いのプロ集団である一政水産の約30人の社員全員が、この『日本一の金目鯛の寿司種』が一度冷凍された刺身であることに、気がつかなかったそうです。

「つりきんめでやる、ということは決めていたのですが、商品化してみて、色々と改良を重ねました。最初は皮をぜんぶはぎ取ってパッケージングしたのですが、何の魚か不明で、見栄えがしないので却下。次に家庭用ですぐにお刺身として食べられるようにスライスしたところ、飲食店の方たちからは、それでは自分の店でアレンジできないから使いづらいと意見をもらい、スライス前の状態のものも商品化することにしました。その他、分量や切り方など、なんども試行錯誤を繰り返して、今の形に着地したんです」

スライスの方は、皮がかみ切れにくいのを配慮し、“八重造り”という、皮に切り込みを入れた切り方で工夫している

世界からリクエストが絶えない、銚子産金目鯛

取材スタート時に『日本一の金目鯛の寿司種』のサンプルをお持ちいただき、取材終了時に試食させていただきました。まず驚いたのが、26〜7度の暖かい部屋でおよそ2時間かけて解凍したにもかかわらず、ドリップがまったく出なかったこと。通常、冷凍した魚や肉をこのような環境で解凍すると、袋やパックに血の混じった水分が染み出すことがほとんどです。

桜色の美しい身を一口いただくと、もっちりとした食感に、後から上品な甘みがやってきて、思わずうっとり。お醤油をつけて食べるのが、もったいないくらいです。皮も弾力があり、切り込みのおかげですんなりと咀嚼できました。

金目鯛には、DHAやEPAといった現代人に必要な不飽和脂肪酸やビタミン類、ミネラル類が豊富で、コラーゲンも含まれています。子どもからお年寄りまで食べやすく、健康と美容に役立つ、まさに心にも体にもおいしい魚なのです。

「いずれは、つりきんめ以外の魚や、米もぜんぶ千葉県産の食材を使った海鮮丼のお店を、東京で出店したいと考えています。このXフリーザーがあれば、限りなく生に近い新鮮でおいしい銚子の刺身を、いつでも・どこででも食べてもらえるようになるので」と、近い将来の目標を語り、目を輝かす北川さん。

取材時のリリース前にして、すでに東京の老舗寿司屋や、オーストラリア・メルボルンの高級レストランとも取引が決まっているとのこと。国内外に注目される、Xフリーザーを駆使した『日本一の金目鯛の寿司種』は、敏腕お魚バイヤーである北川さんにより、これから飲食業界や、世界のお寿司ファンを騒がせそうです。

文・写真:朝倉 奈緒(写真1、3枚目)