わかめで国内初のASC認証を取得
今回販売する「ASCわかめ」は、2022年11月に、国内ではじめて浜人がASC認証を取得したものだ。
ASC(水産養殖管理協議会)認証とは、環境や労働などへの影響が最小限の責任ある養殖水産物である証となる。
日本では価格や産地を重視する傾向があるが、「その商品が環境に対して配慮されているか」という基準で購入する意識は根付いていない現状がある。近年、SDGsに取り組む企業も多いけれど、実際に環境保全について意識している人は国内にどれぐらいいるのだろうか。
「今の時代を引っ張る大人たちが、次の世代の子どもたちのために環境について真剣に考えていくことは今後とても大事なことになると思います。だからこそ、日本の購入基準を変えていき、環境のことも考えて購入してもらいたいというメッセージを込めてASC認証を取得することに決めたんです」と阿部さん。
ASCわかめを購入することで、自然と環境を配慮していることにつながるのだ。
塩の含有量を限界までおさえた塩蔵わかめ
浜人のわかめは、これまで全国の高級料亭や高級飲食店にのみに卸してきた。しかし、今回はじめてECでの販売に踏み切ったという。
「コロナの影響で料亭や飲食店での需要が減少してしまったんです。それなら、一般のお客さまにも直接届くやり方にしようと、EC販売に適した商品を作ることにしました」
そこで、「塩蔵わかめ」を採用した。生わかめを茹でて塩漬けにすることで、家庭でも保存がしやすくなるのだ。
一般的にスーパーで販売されている塩蔵わかめは、塩の含有率が50%ほどだというが、浜人がつくる塩蔵わかめの塩の含有率は25%前後だという。なぜだろう。
「塩の含有率が高いわかめは、塩をなじませるために水も比例して混ぜる必要があります。すると、わかめの葉質が弱ってしまい、浜人が表現したい肉厚でシャキシャキという食感が失われてしまうんです」
25%という保存が効くギリギリの塩の含有率によって水分量を抑える。すると水戻ししたときの食感は、普段食べているわかめとは段違いになるのだそうだ。
また、商品を生産する段階からこだわっていることがある。わかめの収穫時期や種類を加工される商品ごとに分けているのだ。
例えばわかめの収穫時期は1月から4月末ごろまでだが、後半になるにつれ身が厚く、固くなるのだそう。塩蔵わかめであれば、厚さがありながらも食感が楽しめる時期のわかめのみを加工することによって、品質のブレを少なくすることができる。
常に最高品質のわかめを届けるため、日々試行錯誤を重ねる阿部さん。わかめにかける熱い想いが、商品のリピートにつながっているのだろう。
新しい水産業の形を目指して
阿部さんは、漁業の担い手を次世代につなぐための活動も行っている。水産業を「カッコ良くて、稼げて、革新的」な産業に変えるため、2014年には浜を超えた漁師集団「フィッシャーマン・ジャパン」を立ち上げた。
水産庁のデータを見ると、令和2年の漁業就業者は、およそ13万5000人。20年前の平成15年の漁業就業者はおよそ23万8000人であることから、この20年で約10万人ほど減っているのが現状だ。
「そんな現状を変えていきたいんです。漁業の魅力を伝えて、加工・流通・販売業者、行政、消費者、あらゆる角度で水産業に関わってくれる人を増やしていきたいですね。そして、漁師が稼げる仕事になるよう、シフト制勤務を導入したり、海外輸出に乗り出すなど、これからもさまざまな施策を打ち出していきますよ」と阿部さん。
実際に取材をして、次々と出てくる革新的なアイデアに驚かされた。
今回の商品も浜人の想いがそのまま形になったようなものだ。阿部さんが「世界最高峰のわかめ」と自信を持って出す「ASCわかめ」をぜひ家庭で味わってほしい。
文・佐々木僚 写真・株式会社ル・プロジェ