2024.01.10
宮城県2024.01.10
世界最高峰のわかめを十三浜から。
身が厚くシャキシャキ食感のわかめを全国へ!〈前編〉
漁業生産組合浜人

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漁業生産組合浜人

宮城県石巻市北上町にある「十三浜」では、岩手県から流れる北上川のミネラルと外洋で潮の流れが速い海水が混じり合い、肉厚で歯ごたえのいいわかめが育つ。

ここで、漁師たちが世界最高峰と胸を張る十三浜のわかめを養殖しているのが「漁業生産組合浜人(はまんと)」だ。

今まで高級料亭などにしか卸していなかった高品質なわかめを、家庭へも届けたいという想いから今回ECでの販売をスタートさせるという。

そこで、浜人代表の阿部勝太さんにわかめにかける熱い想いを伺った。

震災をきっかけに漁師が結束

「漁業生産組合浜人」が創業したのは、2011年10月11日。

東日本大震災後、もともとは自営で漁業を営んでいた十三浜の漁師4家族が、手を取り合い設立した。

当時、10メートル以上の大津波が地域一帯を襲い、現在の事務所も柱のみの状況になってしまったそうだ。

「船や加工場など、ほとんどが流されて途方に暮れました。それでも、いち早く復興するために、5家族で協業することを決めて浜人が立ち上がったんです」と阿部さん。

漁業生産組合浜人

それぞれが個人事業としてわかめの養殖や加工をおこなってきたが、組合として動き出したことで給与制にもしたそうだ。

「当時は給料設定もざっくりしていて、全員同じ額、宮城県の漁師の平均収入より高めの設定にしました。しかしそれが原因で、立ち上げから2年間で6千万円もの赤字を出してしまったんです。そのときは不安も大きく、正直もう辞めてしまいたいと思っていましたね」

漁業生産組合浜人

しかし、辞めるわけにはいかない。さて、どうするかと考えたとき、阿部さんはもっと自分たちの商品価値を高めるべきだと考えた。

そのために漁協に収穫物を収めるのではなく、自分たちで加工し、パッケージして販路を広げる。そしてここから、十三浜で育てたワカメの価値を伝えるために、浜人は動き出した。

わかめの価値を高めていくために動き出す

「例えば、牡蠣やホタテ、あわびなどの食卓の主役になる商品であれば差別化も図りやすいのですが、わかめは副菜のイメージが強いので、その価値が伝わりにくいんです」

そこで、阿部さんはまず、自分たちが育てるわかめの優位性を探ろうと、あらゆるわかめを国内外問わずネットで取り寄せ、試食をしたそうだ。そこでわかったことは、十三浜で育てられたわかめは、身が厚く、シャキシャキとした歯ごたえが飛び抜けてほかのものよりも良いということ。

漁業生産組合浜人

しかし、歯応えだけを売りにすると、今度は高齢の方にとっては固いと感じてしまうかもしれない。そこで、身が厚くなりずぎず、それでいてシャキシャキとした食感を楽しめるわかめを提供するため、収穫の時期を工夫した。さらに、厚みや色など品質のブレがないように徹底し、常に同じ品質を提供することを目指した。

その結果、スーパーなどの相場よりも約2倍の価格でも「浜人のわかめを一度食べたら、ほかのものは食べられない」とリピーターが増えたという。

漁業生産組合浜人

「その声を聞いたときは、本当にうれしかったですね。漁師だけをやっていると、消費者の声を聞くことってまずないんです。うちのわかめをおいしいといって買ってくれる方たちを絶対に裏切れないと思いました。だからこそ、毎年同じ品質で提供できるように努力しています」

しかし、近年は平均気温が高く、わかめの養殖も試行錯誤の連続だ。それでも阿部さんは「お客様の笑顔のために、最高のものを提供し続けたい」と力強く話す。

文・佐々木僚 写真・株式会社ル・プロジェ

後編へつづく