4つの「あおさ」を食べ比べて欲しい
新商品「あおさの食べ比べセット」では、4つのあおさを食べ比べることができる。
まずは産地の違い。松川浦産と、愛知県東三河産の食べ比べだ。
「あおさの味のイメージは、人それぞれに違うはず。自然環境の影響を受けて育つから、各地域の特徴が食べ比べることで感じられると思うんです」と阿部さん。
例えば、内湾型で育ったものは葉が薄く、潮流が速く波が立つ漁場は厚くなる傾向にある。内湾型で波が穏やかな松川浦で育ったあおさの葉は薄く、光を通すほど透き通った緑が美しい。歯ごたえはやわらかく、つるりとしていて喉越しがいい。
一方、愛知県の漁場で育ったあおさの葉は厚みがあり、深い緑色だ。松川浦産のものと比べると、噛み応えの違いを感じるだろう。
また、同じ品種、同じ場所で育ったあおさでも、加工の仕方で味わいが変わる。その違いを味わってほしくて、それぞれの産地のあおさを乾燥・冷凍タイプで用意した。
「乾燥あおさ」は、味も香りもギュッと濃縮されていて、パッケージをあけるとあおさの香りに包まれる。一方で「冷凍あおさ」は、あおさ本来の風味や食感を味わうことができる。
乾燥、冷凍、それぞれのあおさを使って味噌汁を作ってみると、材料は同じでも違った香りや食べ応えを楽しめそうだ。
「冷凍あおさは、一般家庭用に販売することはまずありませんでした。だからこそ、くちどけが良く、食べた後にふわりと香りが立つ生あおさのような食感を楽しんで欲しいんです」と阿部さん。
スーパーなどで購入が難しい冷凍あおさは、茶碗蒸しやお吸い物などシンプルな味つけの料理でぜひ味わってみてほしい。
家庭の食卓に取り入れやすいレシピを提案
産地の違いに、加工の違い。味や香り、食感も異なることがわかってきたが、違いを感じるためにも、あおさを使った料理をもっと知りたい。
「今回の商品開発で一番大事にしているのは、食べ方の提案です。あおさの品質がどれだけよくても、食べ方がわからなければ購入しようとは思わないですよね。イタリアンシェフと一緒に考えたレシピを7~8種類ほど用意し、食べ比べセットと一緒にお届けします」
マルリフーズでは、おいしいだけでなく、家庭での再現性を兼ね備えたレシピを模索中だ。働きざかりの子育て世代をはじめ、現代社会を生きる私たちの日々は忙しい。だからこそ手軽に、家庭でいつもの食事にあおさを取り入れてもらえるような料理を目指している。
イタリアンシェフにお願いしたのにも、理由があった。
あおさは日本特有の海藻であり、和食のイメージが強いが、イタリアンや洋食など料理のジャンルを越えて、あおさの可能性も広げていきたいという想いがある。
これまでに検討してきたレシピは、ピザやパスタなど洋風ものから、チャーハンや稲荷ずしといった日本人にも馴染みが深いもの、あおさバターなど汎用性が高いものまでアイディアが広がった。新商品発売という、ゴールは目前だ。
「すてっぱず」なあおさを、世界でも誇れるものに
「すてっぱず」とは、「ものすごい」という意味で使われる松川浦の浜言葉。
マルリフーズでは、相馬市の事業者と一緒に「すてっぱず松川浦」というブランドを立ち上げ、6次化商品を開発してきた。つくだにや刺身こんにゃくなど、さまざまな形であおさを消費者へ届ける工夫をしている。
一方で、市場の規模やあおさ漁師の高齢化など、向き合わなければならない課題もある。
「松川浦のあおさは素晴らしいことを、地元の子どもたちにこそ伝えていきたいと思っています。産地として認識するだけでなく、相馬ではおいしくて栄養たっぷりのあおさを作っているんだという誇りをもってくれたら嬉しいですね。私自身が幼いころはあおさの魅力に気づけなかったからこそ、注目してもらえるきっかけづくりをしていきたいです」
さらに阿部さんは、「松川浦産のあおさが、日本を飛び出して世界へも広がることを目指します」と語気を強める。あおさへの並々ならぬ想いを感じた。
栄養価が高く、料理の汎用性が広いあおさの魅力にまだ気づいていない人は、多いかもしれない。実際に取材をしてみると、日本各地のあおさを食べてみたいと好奇心を刺激された。あおさの食べ比べセットをきっかけに、あおさにワクワクする人が増えていくだろう。
文・写真:蒔田志保(写真1枚目、5枚目 事業者提供)