2023.02.16
青森県2023.2.16
技術力で他社との差別化をはかる
~冷凍食品のノンフライエビフライを作る~ vol.02
株式会社合食

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試行錯誤で完成したノンフライのエビフライ

工場を案内してくれた小泉さんは、となりまちのおいらせ町出身です。新卒で合食へ入社し、今年で2年目。最初の1年間はお魚フレークや塩辛や珍味などを製造する函館工場で勤務し、昨年八戸工場へ異動してきました。

「昔からご飯を食べるのが好きで、将来は食品関係の仕事に就きたいと考えていました。地元の青森県立八戸高等学校から、弘前大学農学生命科学部へ進学し、卒論ではイカの酵素をテーマに研究しました。

合食はイカの原料に強いですし、地元へ戻ってこられる可能性もあると考えて就職しました。うちの工場で作った焼きイカなどはスーパーに並んでいるので、手にとっている方を見かけると嬉しいです」

と、顔をほころばせます。開発として企画から携わったのは、ノンフライ商品が初めての経験となりました。ずっと食品の商品開発の仕事がしたかった小泉さんにとって、夢が叶えられるかたちに。初めての商品開発で苦労した点については、こう振り返ります。

「八戸工場では、もともとエビフライ自体は製造していましたが、今回挑戦するのはノンフライ。揚げないものは初めてだったので、機械をどう設定していくか、焼き上げていくかがテーマでした。一時期ノンフライヤーが流行したことで、一般消費者向けのレシピは出回っていたのですが、事業者向けのレシピはなかったので、どういう味を目指していくのかを調整するのが難しかったです。

また、油を使っていないので、油自体のおいしさはのらせられません。そこで、別のところで、いかに旨みを出せるか、試行錯誤しました」

「親しい人たちに食べてほしい」

小泉さんが開発中に思い浮かべたのは、親しい人たちの顔でした。

「営業職であれば、お店の方やお客様と直接お話しする機会もあると思うのですが、僕自身はまだそういった機会がないので、身の回りの、親とか友達、地域の人に食べてほしいと思って開発しました。

食べるのが好きで自炊もするんですが、忙しいときには冷凍食品や惣菜を買うこともあるので、ノンフライでヘルシーなのに、おいしく食べられるものを目指しました」

東京と八戸という遠隔での開発だったので、試作品を東京へ送ってフィードバックをもらったり、担当の小野さんが出張して打ち合わせたりと、何度も試食を重ね、2023年1月、ついに「ノンフライひとくちエビフライ」が完成しました。

水揚げ量の減少にどう向き合うか

青森県八戸市は、漁業のまちとして知られ、それに伴って水産加工技術も発達していったという歴史があります。

筆者は八戸市のなかでも魚市場のある地区で生まれ育ちましたが、生家の近くには、ちくわなどの練り物をメインに製造する水産加工会社がいくつかありました。学生時代は、いわゆる魚の生臭さが嫌な時期もありましたが、東京で暮らしたあとにUターンしてきたとき、あの匂いが懐かしく感じられました。

ただ、移住してきたときには一番近くにあった工場はすでになくなっていたのです。

いまや八戸だけの問題ではありませんが、漁獲量が下がったという話を耳にします。加工業も水産業と密接な関係があるので、合食の八戸工場でも大変な時期があったのではないかと想像しました。

そのことを聞いてみると、小野さんは静かにこう答えます。

「せっかく八戸に工場があるので、八戸が名産のサバやイカ、ホタテなどは地元のものを使いたいと考えていたんですが、近年では漁獲量が減ったり価格が高騰したりして使えていないんです。しかしそこは、卸売業からはじまっている合食だからこそ、輸入に長けているという特色を生かし、海外から魚類を仕入れることで安定供給しています」

もちろん、地元産のものを使うこと、適切な資源管理を行って漁業を守ることが理想ですが、加工業は原料がなくては途絶えてしまいます。

新たな機器を入れたり、新たな商品を開発したりすることによって、ここで働く人たちの雇用はもちろん、技術を守ることにもつながっているのだと感じました。

合食の水産加工技術は、これからも日本の魚食文化を継承していきます。

文・写真:栗本千尋