2023.11.17
福島県2023.11.17
旬の魚を新しい食べ方で楽しめる
いわきの“味”が詰まった「浜のおつまみ」〈後編〉
有限会社上野台豊商店

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有限会社上野台豊商店

商品の磨きあげが、底上げにつながる

磐城イセエビのピッツァをはじめ、厳選した魚介の加工品をつめあわせたのが、「高級 浜のおつまみセット」だ。同社が運営しているオンラインショップでも、選りすぐりの商品を集めたセットを販売しているが、「高級 浜のおつまみセット」では、さらに2つの特徴があるという。

1つ目は、食べやすさ。今回のセットに加わっているレトルトのめひかりの開き干しは、なんと、袋を開けたらすぐ食べられる。フライパンで加熱する、電子レンジであたためるといった手間も省かれているため、即座にめひかりにかぶりつける魅力的な商品だ。肝心のめひかりの脂も、もちろんそのまま味わえる。

常温かつ、個包装で販売されており、出張のサラリーマンからも密かに人気をあつめているという。「熱々のご飯の上に、めひかりを乗せて食べるアレンジレシピ『めひかり茶漬け』もたまりませんよ」と上野臺さん。

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常磐沖は、全国でも有数のめひかりの漁場で、2001年にはめひかりが「いわき市の魚」に認定されている。また、調査の結果、常磐沖のめひかりは他の地域で水揚げされるめひかりに比べて、粗脂肪が高いことがわかった。よい魚があるからこそ、レトルト化しても品質が落ちないのだ。

「福島の魚を『常磐もの』として普及しつつも、これまで以上に、自社商品の磨きあげをはかることが必要だと考えています。私たち加工業者ができるのは、商品づくりを通じて魚に向き合い、魚の魅力や価値を最大化することです。人と同じことをあまりやりたくない私の性格ゆえかもしれませんが、『おいしい!』と思って食べていた商品が、『常磐ものを使った加工品だったんだ!』と、のちのち知ってもらえるのが理想ですね」

料理の味付けが家庭で少しずつ異なるように、水産加工会社それぞれに、干物の干し時間や加工法などのこだわりがある。商品の磨きあげが、常磐もの、ひいては漁業全体の底上げにつながっていく。上野臺さんの言葉から、商品づくりの先に、地域や産業の振興を見据えていると感じた。

無駄なく、地元で消費する

2つ目は、いわきの浜の味を詰め合わせている点だ。これまでもお土産向けのセットを開発してきたが、自社商品だけでは数が少なく、ギフトセットとして魅力が足りない点を課題に感じていた。

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解決の糸口になったのが、いわきの観光物産館である「いわき・ら・ら・ミュウ」内に直営店「小名浜あおいち」をオープンしたことだ。小名浜あおいちでは、同社の加工品を中心に、上野臺さんが自らセレクトした福島の逸品を販売している。中には、いわき・江名の水産加工会社「海幸」のアンコウの唐揚げ、同じく江名の「カネセン水産」の味付けタコも並ぶ。

「自分のお店を構えたことで、これまでつながりがあったお店との連携が増え、陳列のバリエーションも増えました。各々が磨きあげてきた自慢の商品を詰め合わせて、『いわきのギフトセット』をお届けできたらと考えています。大きい市場になればなるほど、比例して商品の数も必要になりますが、少人数・小規模でやっているところにとっては、その仕組みはあまり持続的ではないんですよね。この店やオンラインショップで少しずつ販売していきながら、普段は流通しない魚や商品も、みなさんに知ってほしいです」

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お店をつなぐハブとなり、水揚げされた魚を無駄なく地元で消費する仕組みを考えたいと語る上野臺さん。水揚げの状況や季節によって、ギフトの内容が変わるとのことだが、お客さんにとっては旬の魚を待つ楽しみにつながるはずだ。

変わらない信念

上野台豊商店は、新しい食堂のオープンを年内に控えている。地元の人たちに、魚を「気軽に」食べてもらえる場所をつくりたいと、構想をふくらませてきた。お店づくりを支えるのは、「小名浜の魚を美味しく食べてほしい」という上野臺さんの変わらぬ信念だ。

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朝は、さんまのすり身でつくったアツアツのつみれ汁を、昼には、絶妙な塩梅で干し上げられた干物と一緒に、ご飯をかきこむ。そして、特別な日のごちそうには、イセエビのピッツァを。

かつて、あたりまえにあった魚のある食卓は、上野台豊商店をはじめ、多くの漁業者のみなさんの工夫により、かたちを変えて、わたしたちの暮らしに取り入れられている。上野台豊商店は、今後も小名浜から、食文化と食卓をつなぐ新たな取り組みを仕掛けていくだろう。

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文・写真 前野有咲