2023.12.15
福島県2023.12.15
アヒージョにかまぼこを!?
アイディア商品でかまぼこを普段の食卓に。〈後編〉
株式会社貴千

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株式会社貴千

アイディアが生まれたのは何気ない日常の会話がきっかけだった

かまぼこを使ったアイディア商品を数多く開発してきた貴千が今回手掛けたのは、「かまぼこアヒージョ」だ。

どのような経緯で開発に至ったのだろう。

「アイディアは、もちろんわたし自身も考えますが、スタッフに『こんなのどうだろう?』とか、『何かいいアイディアないかな?』と聞きながら進めています。ある日、キャンプ好きのスタッフが『アヒージョにかまぼこを入れてみよう』というので試しに入れてみたらすごく美味しかったんです。そこで次に商品開発するときはアヒージョでいこうと決めました」

新商品の開発のヒントはスタッフとの会話からだけでなく、お客さんとの会話からも得ていると小松さんはいう。

「こんな商品があったらいいのに」とお客さんが何気なく口にした要望を逃すことなくしっかりとキャッチすることで、斬新なだけでなく需要にマッチした商品を貴千はつくってきたのだ。

試行錯誤の上に完成したアヒージョ用かまぼこ

「かまぼこアヒージョ」に入れるかまぼこのタイプは高級志向な方のおつまみに合う味を目指し選定。

最終的にはお酒に合い、かまぼこの旨味を最大限引き出せるスモークベーコンとチーズの入ったかまぼこを入れることになった。「かまぼこアヒージョ」にはその他にガーリックチップスや鷹の爪などが入っている。

かまぼこづくりにおいて貴千がこだわったのは、素材の味を活かすこと。そしてプリッと弾けるような食感だ。さらに、キャンプや山登りなどに行く際に気軽に持っていけるようレトルト加工をすることで常温保存ができるようにした。

小松さんによると、レトルト加工は熱を加えるため、かまぼこに入っているベーコンの脂身がかまぼこにギュッと浸透する。その脂身は旨味にもなるが、かまぼこが脂を吸うことで貴千が理想としている食感ではなくなってしまう。

株式会社貴千

どうすればレトルト加工後もプリッとした食感を残せるか。試行錯誤は半年以上も続いたそうだ。

「一番大変だったのは使用するベーコンの選定ですね。ベーコンによって脂の量や質が微妙に違い、その差異によってかまぼこの食感も微妙に変化するんです。10種類以上は試して、丁度いい程度の脂を含んでいて、かまぼこの味に一番マッチするものを選びました」

アヒージョに欠かせないオリーブオイルは、オリーブの実の一番搾りであるエキストラバージンオイルを使用。ポリフェノールやビタミンEなど、抗酸化作用成分が含まれているため、健康効果や美容効果も期待できる。

「健康への意識が高い方が年々ふえているので、栄養価が高く、そのまま飲めるオイルを使用したいと思い、エキストラバージンオイルを選びました。かまぼこアヒージョは、そのままおつまみとしても食べられますし、パスタに和えるなどアレンジをして楽しんでいただけるとうれしいです」

お酒好きにはたまらない。香り良し、食感良しな一品

取材の終盤、特別に試食をさせていただいた。瓶を開けると、にんにくとブラックペッパーの何とも言えない香りがした。

株式会社貴千

「かまぼこは脂は吸いますが、味がしみにくい食材なんです」と小松さん。しかし、一口噛むと凝縮された旨味が広がり驚いた。オリーブオイルに溶け出たにんにくや鷹の爪などの旨味や香りが、しっかりとかまぼこに染み込んでいる。

満足気に小松さんはいった。

「良質な脂や旨味を含んだベーコンを使用することで、かまぼこの旨味がより凝縮されているんです」

お肉かと思うくらいジューシーな味わいと貴千のかまぼこらしい弾力のある食感。おつまみにはもってこいの一品だ。

“ブレない商品作り”をこの先も

株式会社貴千

取材を通して伝わってきたのは、小松さんをはじめとするスタッフたちのかまぼこ愛だ。感じたことをそのまま伝えると、小松さんは「僕らはかまぼこしかつくれませんから」と少し照れた表情でいった。

その言葉からは、60年以上かまぼこづくり一筋で歩んできた“貴千の誇り”のようなものが感じられた。

株式会社貴千

「かまぼこ屋って常に同じ原料が確保できるわけではないんです。魚も生き物なので個体差がありますし、シーズンによって捕れる魚や量も変わります。それに、物価の上昇や気候変動による漁獲量の減少など、原料が命のかまぼこづくりにおいて今は厳しい状況です。ですが、それらを言い訳にしてかまぼこの質が下がってしまってはお客さんの期待を裏切ってしまいます。なので、貴千がこれまで大切にしてきた“ブレない商品作り”を今後も続けていきたいです」

かまぼこをより身近なものにするために、試行錯誤しながら数々のアイディア商品を生み出してきた貴千。果たして次の一手は。期待が膨らむ。

文・写真 永井章太