2024.11.1
青森県2024.11.01
高級魚・八戸産キンメダイを
新鮮“漬け丼”でお届け〈後編〉
株式会社マルヌシ

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株式会社マルヌシ

タイパ重視で手軽に食べられる「漬け丼の素」

キンメダイを原料とした加工品の商品開発に乗り出した坂本さんだが、これまでマルヌシでキンメダイを扱った商品は、頭付きしゃぶしゃぶセットや姿盛り刺身キットなど、一次加工に近いものを提供する程度だったという。

八戸港で水揚げされた天皇海山海域のキンメダイは、インド洋沖やニュージーランド沖で獲れるものと比べて脂が乗っており、濃厚な旨味が特徴。そのため、坂本さんは煮付けなどの火を通した加工品ではなく、生食での提供にこだわった。

「まず刺身やしゃぶしゃぶなど、素材の味を生かす商品を考えましたが、ご飯との相性を考えると下味をつけたほうが食べやすいかもしれないと考えました。そこで、漬け丼にするのが良いんじゃないかと思い至りました」

核家族化に合わせた一人前分の冷凍でお届けすれば、忙しい共働き世帯でも手軽においしく、満足できる食卓になるはず。そう考えた坂本さんは、解凍するだけで普段よりも少し豪華な食事が手軽に食べられる漬け丼の開発をはじめた。

ベーシックな味だからこそ、アレンジを楽しめるどんぶりに

株式会社マルヌシ
サクラマスの加工作業をする作業員

商品開発では、坂本さん自身がしめさばや貝類などに苦手意識があったことから、魚特有の生臭さを取り除き、最低限の味付けを心がけたという。

「漬けにしたとき、もとの魚の良さをどう活かすか。それに一番こだわりましたね。見た目にもキンメダイと分かるように皮は残し、キンメダイ本来の味と旨味を感じられるように漬けダレにもこだわりました。食べ方のアレンジや味の好みはお客様に任せ、子どもからお年寄りまでどんな人でも食べられるようなベーシックな味を心がけることで、魚に苦手意識を持つ方にも手に取っていただけるような商品を目指しました」

株式会社マルヌシ
ベテランの作業員だから実現できる、ていねいな商品づくり

淡白な白身魚だからこそ鮮度が味に出てしまうため、湯引きの温度管理の徹底や冷凍するタイミングを検証した。また、漬け丼の要である漬けダレは、調味料メーカーや地元のキンメダイ調理に詳しい方々に教えていただきながら試作を繰り返したのだそう。

「1回のサンプルで3〜5種類の調味配合を変えたサンプルを準備し、どの段階の味付けがキンメダイに合っているか試作しました。ご飯に乗せたときはどうか、タレの量はどうかなど、社員にも何度か味見をしてもらいましたが、どこが違うのかは自分にしか分からなかったんじゃないかな(笑) それくらい、繊細な部分まで調整を重ねました」

また、食べたときにボリューム感を感じてもらえる量や切り身の厚さを検討し、安心して食べてもらえるよう骨はすべて取り除いている。勤続10年以上のベテランの職人が、これまでの経験を活かし丁寧に仕上げているのだ。

株式会社マルヌシ
「漬け丼の素」パッケージのイメージ

「パッケージは外箱を使用せず、真空パックの袋にどんぶりのイメージがそのまま印字されているデザインにする予定です。インパクトのあるパッケージなので、商品が負けないよう、内容量のボリューム感は重視しています」

商品はどんぶりに乗りきらないほどたっぷりのキンメダイの切り身が一人前として入っている。出汁が効いた漬けダレがキンメダイ本来の味を邪魔しないため、白米との相性も抜群。後半は出汁茶漬けなどにアレンジしてかき込んでもおいしくいただけそうだ。

誰もがハッピーになれる商品作りを

株式会社マルヌシ

販売開始に向けて八戸港産「金目鯛の漬け丼の素」の準備は着々と進んでいる。これからの商品作りについて坂本さんは、食文化に寄り添い、食べ方を提案していくことで、魚の魅力が引き出された商品を作っていきたいと語る。

「海の状況は日本全体、世界全体で変わってきています。今まで南で揚がっていた魚が北で揚がったり、全然水揚げされなくなったり、当然、見慣れない魚にも出会います。海の環境が変わっていくなかで、その魚についてなにも知らない状態でものを作るのではなく、もともと食べられていた地域に伝わる食文化や味付けを知り、ご教授いただいて商品作りに向き合っていきたいです」と、坂本さんはこれから先の商品づくりのために魚を理解する努力が一層必要だと力を込める。

「全国各地でさまざまな魚が揚がっている状況なので、県産にとらわれず、水産品の魅力を伝えていければと思います」

作り手も、販売する会社も、買っていただくお客様も、全部ひっくるめてハッピーになれる商品を作りたいと話す坂本さんの目は、地場にとどまらない水産業の未来を映している。

文・鈴木麻理奈 写真・世永智希